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繊研新聞掲載 ファッションDXDAYs2024 基調講演 2023年繊維商社が描くDX展望 共通活用が不可欠

2024年4月5日付け 繊研新聞電子版掲載記事

弊社、代表取締役CEOの谷本広幸が基調講演に参加した記事が繊研新聞に掲載されました。

 アパレル業界が共通活用できるプラットフォームや、AI技術による業務効率化が〝商社のDX展望〟において必要不可欠であることが示された。

回復・安定期へ

 タニデジタルラボ代表取締役CEOの谷本氏は、アパレルDX(デジタルトランスフォーメーション)における業界の〝現在地〟について「新技術の社会的な立ち位置を説明する指標となる〝ハイプ・サイクル〟で見た場合に、18~22年の黎明(れいめい)期までにCLOやブラウズウェアなど3Dソフトウェアが注目された。21年には〝3D・CG元年〟との認識が業界で広がった。しかし、コロナ禍が収束するなかで〝リアル主義〟とも言える〝DX離れ〟が進んできた。今年が〝底〟になるだろう。今後は回復期、安定期に向かっていくと考えている」との見方を示した。

 これを受けてヤギのSCM統括部部長の水口氏は「個別のユースケースに特化した様々なデジタルプラットフォームが出来ている。アパレルビジネスの現場では、新たなシステムに対応するために『IDとパスワードを管理するだけでも大変だ』というのが本音ではないか」と言う。アパレル業界独特の課題は属人的でアナログな作業が多いこと。「発注単価を決めないで発注して、輸入する直前になって契約を交わす」など、今の業界に存在する商慣習を挙げた。「人手不足と言われているなかで魅力ある業界でなければならない。業界の膨大で多種多様な情報収集・管理を行うデジタルプラットフォームが求められている」との認識を示した。

 豊島のDX推進室課長の岡本氏は、業務のデジタル化を標準的に実装することが大事としながら「システムやデータ活用については、非競争領域として多くの企業が協力して導入する必要がある。多様なデジタルプラットフォームが存在するなかで、シームレスにデータが流れていく仕組みが求められており、FEDIはその役割を果たすことができるものとして期待している」と強調した。

 安永氏は「ハイプ・サイクルを念頭に置いた場合、AIはこれから拡大してくる。今後は消費者に近い小売り業界で様々な活用がなされるだろう。その使い方を模索するのが今年の大きな流れだと見ている。そのなかでデジタル化が着実に進んでいく」と指摘した。ネット販売におけるバーチャルフィッティングの事例などを紹介しながら、「その際にサンウェルが持つファブリックデータの活用が求められる」と想定している。

サービスが多様化

 各社のDX化に向けた動きも紹介された。豊島は、22年5月に経済産業省の「DX認定取得事業者」を取得し、同社は現在、「生産管理DX」と「価値創造DX」を掲げている。昨年7月にはDX推進室を新設し、既存のデザイン企画室との連動を進めながら生成AI(人工知能)で多種多様なテキスタイル柄を提案する「感性AI柄」システムなどのサービスの開発や活用を進めている。

 ヤギは、3Dデザインとデジタル生地のライブラリー「スウォッチブック」や、グローバルECプラットフォーム「リングブル」など、DX化に向けた投資を積極的に行っている。一方、社内業務での活用では「シタテル」クラウドや、自社のテキスタイルECプラットフォーム「ファブリー」を活用。水口氏は「最新のデジタル技術に出資しながら自社の業務改善に活用している。多種多様で細かい出荷にデジタル処理で対応することで効率化を図れる。これがデジタル化の大きなメリットだ」としている。

 サンウェルは自社テキスタイル販売ECシステム「サンウェルネット」のリニューアルを25年に予定している。マーケティング業務を自動化するMAツールを導入することで「個々のユーザーに対する提案機能を向上する」。検索機能についても素材や機能性、色、規格などによる多様な絞り込みが可能になる。新商品や特集ページなどのコンテンツを増やし、お薦め商品を分かりやすく提案することにも注力する。デジタル提案では生成AIを使うことでサービスの拡張を進めている。サンウェルの安永氏は「生地単体では製品イメージが伝わりにくいため、アパレルのリアルなイメージを生成AIを活用して提案する」考えだ。

注目のFEDI

 NTTデータが打ち出した繊維・ファッションビジネスのサプライチェーン全体に関わる製販コミュニケーション連携拠点となるEDI(電子データ交換)、「FEDI」(フェディ)についての話題が広がった。

 業界のサプライチェーンでは現状、サプライヤーは製品の納品先ごとにシステムの使い分けが必要で、物作りの際には、BOM(部品構成表)を使ってアパレルや素材メーカー、商社、工場などと情報を共有するが、今のBOMは形態が多様で、メールやファクスによる個別のやり取りも多い。FEDIは、統一取引番号として共通メッセージ仕様を制定することで、異なるシステム間のやり取りを可能とし、クラウドで共有された仮想BOMを実現する。FEDIで一元管理した情報が集約されるため、ここで管理する情報は当該製品のサプライチェーンに関わる各企業がコンカレント(同時並行)に製品の状況などを確認できる。

 岡本氏は「2年ほど前からNTTデータとのお付き合いがある。当初NTTデータは商品企画やメタバースを活用するディマンドチェーンでの業界進出を狙っていた。しかし、私の方から『業界の実情は調達・生産・物流・決済などのサプライチェーンのデジタル化ができていない』と指摘させてもらった。そこからNTTデータの戦略の方針転換がなされた」と語った。

 FEDIは、23年10月のインボイス制度施行を機に、請求や決済などに関わる電子文書をネット上でやり取りする電子請求のサービスを開始しており、豊島やヤギ、サンウェルなどの繊維商社及び服飾資材メーカーを含む企業が参加し、実装に向けた検討会が定期的に開催されている。

 更に岡本氏は「複数の商社の財務・経理部門の担当者とともにサプライチェーンファイナンスに関する課題感を共有しながら効率化に向けた検討を行っている」ことも明らかにした。

 ヤギの水口氏は、ファブリーの受発注をFEDIとの連携で効率化する。「将来的にはスウォッチブックとも連携する」計画だ。

 サンウェルの安永氏は「FEDIとの連携については検討中だ。基本的には当社の顧客が『使いたい、使いやすい』ツールであれば連携する」考えだ。「まだまだ業界でデジタル化が進んでいる訳ではない。川上や川中の方といかに協力して進んでいくかが大事だ」と考えを示した。

掲載許諾済

繊研新聞 | No.1ファッションビジネス専門紙」 (senken.co.jp)

2024年4月8日

タニデジタルラボ株式会社